←top akane-a 赤根 ぜんじょうまつり
白地 黒地
2011/9/1-5

文字サイズは中、フォントは等幅フォントでご覧下さい。

 このお祭りは、今から二百三十年位前の 明和年間(一七六四~七二)に、現大分市の賀来に鎮座している「賀来神社」よりご分霊を、この赤根の里の住民『安藤家・秋吉家・佐藤家』の先祖の方々に依って勧請された、「勧請善神王」に対し、五穀豊穣・無病息災・家内安全・商売繁盛を祈願するものである。

9月1日の初日から10日までを祭りの期間とし、最終日の10日は、大松明立てが行われ、その火に照らされた境内でお神楽や神踊り(盆踊り)が盛大に行われる火祭りである。

勧請されたご神体は、幟旗と言われる、「勧請善神王」と書かれた幟旗。見る目には比較的新しく、二百数十年前のものとは思えない。聞けば、旗は時折新しくされ、善神王に新しい旗に移っていただくとの事。あくまでも、この旗が善神王なのである。

このお祭りの存在を国見町の山本純夫氏のブログによって知り、更に、氏より頂いた資料によって興味を持ち、このたびの取材となりました。氏には深く感謝致します。


9月1日(木)

初日の神事の様子を確認に出かける。一円坊の“赤根山神社”を過ぎて程無くの所に旧伊美小学校赤根分教所校舎を利用した赤根地区の公民館がある。公民館前の道路に5・6台の車が停まっている。
公民館に目をやると、庭に数本の幟旗が立てられ、館に明かりが灯いてる。

早速覘いてみると、館内では直会(なおらい)が行われている。
館内の上座に祭壇が作られ、最上段には古い箱に注連縄と御幣が巻かれている。その前で、神官と赤根集落の人が並び直会最中だった。

入手した資料に依れば、「直会の終わる頃、里内の若者達、また、赤根地区の迫々より関係者や参拝者が集まって来る。参拝者が善神王様にお参りし、太鼓が鳴りだし、口説きが始まり、若者を先頭に、見物人・参拝者も善神王幟の下で神踊りが奉納される。」・・・とあるが、今は直会でお開きとなるようだ。

当然、当場の家で行われた神事も、今は、全てこの公民館で行われる。

直会中の方にお声掛けすると、一人の男性が立ち上がって私の相手をしていただいた。

10日の予定をうかがうと、公民館で神事の後、おおよそ午後7時半にお宮へ向けて隊列が出発し、神社で大松明立てとなるとの事。

大まかな時間割をうかがって、帰路に着いた。

9月5日(月)中日(なかび)


夕方、赤根一円坊社に到着すると、境内には、大きな松明が準備されていた。

一円坊社の前に1台の軽トラックが停まっている。
軽トラックの主に話をうかがう。主は、この近くにお住まいの安藤さん。

山本氏に提供いただいた善神王祭事の記録を見ていただき、今との違いを教えていただいた。この記録を編纂した、武多都社宮司 須磨惟憘氏はすでに他界し、今は、ご子息がこの祭事を執り行っているとの事。

資料には、初日、中日の行事が書かれているが、現在は、過疎と高齢化による人手の不足から、行事の内容は大幅に簡素化され、中日の行事は無く、初日は、公民館での祭壇準備、幟旗立て、神事と直会のみとなったとうかがった。


さらに、次のような苦労話も聞かせていただいた。

大松明は大人の腕ほどあるカズラ(藤の蔓)で縛られている。この大きなカズラは枝のない高い木に巻きついている為、電柱のような木に10m以上の高さまで登らなければ採る事が出来ない。相当な強者でなければこの作業は出来ない。

高齢化の進む地域では、これも大きな問題のひとつであると。

また、昨年まで、善神王祭保存会代表を務めていた大石勝也氏は今年他界されたそうだ。

さて、大松明だが、社殿前のやや右手に配置されている。その大きさは、長さがおおよそ9m、直径は1m、重さは、1トン強。

大松明の中身は、枯れ竹や枯れ枝が詰めら、その外を枯れた竹で取り巻くように囲み、大きなカズラで締め付けてある。

大松明は、梯子とドラム缶で支えられ、30度程度の角度で置かれている。もしもの事を考え、ワイヤーが掛けられている。

安藤さんの話によると、立てている途中で倒れた事があったそうだが、幸いな事に怪我等の事故には至って無いとの事。
また、この大松明も、以前に比べて少し小さくなったとの事。資料には、長さ9m、重さは1.5トンとある。

安藤さんは、この大松明を縛るカズラの残りで、龍を作って飾るとの事。すでに一つ作って飾ってあるとお聞きしたので、早速見せていただいた。
場所は、赤根温泉と渓泉の間あたり。安藤さんの仕事場の脇に胴体がカズラ、頭が孟宗竹で作られた龍が空を睨んでいた。
なかなかの出来である。もう数匹作る予定だそうだ。

ちょっと話が逸れるが、安藤さんのお宅の脇にヒマワリが満開に咲いている。その畑に小さなかんばんが立てられ、そのかんばんに「そっぽうを向いている」と書かれている。その理由をたずねると、道を通る皆さんの方(西)を向いて欲しいが、皆通りに背を向けて咲いているからだそうだ。そのかんばんの直ぐ脇にもう一つ更に小さなかんばんがあり、「あんたはえらい」と書いてある。このかんばんの傍には、道路を向いて咲いている小さなヒマワリが一つあった。・・なかなかユーモアに富んだ安藤さんだ。