|
2002年1月25日(金)
真玉町恵良地区から猪群山(458m/二等三角点)山頂のストーンサークルを目指して車を進める。
結構狭い道の上、くねくねと曲がりくねって上る。もちろん、対向車があればどうやってすれ違うか、想像しただけで前へは進めなくなってしまうほどである。
この道を6kmほど上るとストーンサークル登山道の道案内がある。車を止める場所が無くて困っていると、谷側に鳥居があり、その前に車1台を停めるのが可能なスペースを見つけた。ここに車を突っ込んでストーンサークルを目指すこととした。 |
|
|
山を見上げると、山頂までは結構な距離がありそうである。
標識の有るところから見える登山道は歩きやすそうに見えた。
しかしながら、一足踏み込むと想像とはまるで異なるがれきの登山道が私を待ちかまえていた。
日頃運動を滅多にしない私には1秒に1歩程度のペースで、1歩が約15cmほど高度を消化して行く。 |
|
10分も歩くと、頭皮は汗を噴きだし、帽子が汗の蒸散を遮っていることに気づいて帽子を脱ぐ。
ハアハアと息づかいを荒立て、ドクドクと心臓の高鳴りを脳で感じながら、気持ちは山頂を諦めずに、足を無理矢理運ばせる。
登山道は鬱そうとした杉林の斜面を右左に、まるでスイッチバックの線路のように頂上へと上がってゆく。
がれきの道を、がれきのみを見つめながら、やっとの思いで足を前へ踏み出しながら、少しずつ前進する。 |
|
|
|
あまりの苦しさに立ち止まると、あおいが真っ赤な実を付けていた。
あまり焦る事も無い事に気づいて、周囲を見渡してみると、杉の木立の根本にはたくさんの植物が見える。
この頃滅多に見なくなったシダ類やコケ類ががれきの表面を覆っている。
赤い実を付けたオモトに似た植物もある。
間伐で倒された杉の木には縞模様が蝶々にも似たキノコが一面に見られる。
ほとんど太陽の光が届かない森の中にもシダ植物や菌類の世界がある。
|
|
|
|
|
|
|
しばらく乱れた息を整えて前進を再開する。
登山道から25分か30分ほど歩いただろうか。ほぼ、頂上までの道のりの半分くらいのところまで上った。
あたりは、なお一層荒々しくなる。
足下はがれきを越え、大きな石ゴロとなる。迫り来る斜面には、今にも崩れ落ちそうな巨石が上り行く私を威圧する。
植林された杉は、根を差す土を求めて石をまたぎ、まるで人の手が大地を掴む様に見える。
冷たい空気と、静寂が神を感じる。
突然、バタバタと不器用な羽音が目の前から谷へ向かって駆け下りる。天狗でも出たかと仰天したが、尾の長い雄のヤマドリだった。気を取り直して5歩ほど上ると、ついばまれた真っ赤な実が残されていた。今慌てて飛び去ったヤマドリが食事中だった事を知る。
さらに、険しい登山道と戦いながら30分程で頂上へと到達した。 |
|
|
頂上には、私のような体力無しを思って、ベンチが備えられていた。ここで呼吸を整えた。ここから左右に道は分かれる。しかしながら、道標は無く、私は右に進んだ。5分ほどで高台に出たが、ここは猪群山頂上の見晴らし台だった。ここからの素晴らしい眺めを楽しみ、カメラにも納めて、もう一方の道へと戻る。
|
ベンチから100mも歩くと、そこが巨石群の入り口である事を察する。気持ちを高ぶらせながら、巨石群の説明を読み、入り口の巨石の門を通る。 |
【説明標識転記】
猪群山頂の環状列石中央の巨石を中心に、直径は東西二三メートル、南北四二メートルの円状をなす。円周には一六個の巨石を配置している。
更にその外周には、直径約七〇メートルの円状を成す様に二四個の石が配置されている。その外周には、高さ一〜二メートル、周囲二七九メートル土坡をめぐらしている。
この内側が神域であって、いつの時代かの祭祀遺跡と思われる。
昔からこの神域には、女人の立ち入りを禁じている。
中央の巨石の頂上にはくぼみがある。くぼみの水は、海の潮の干満とともに満ち干があり、この中には金魚が住みついているが、これを見ると盲目になるという伝説がある。
神域の西方の高地で、雨乞いの時の千把焚はおこなわれていた。 |
|
やや傾斜した入り口からは巨石の規模は皆目検討がつかない。あまり大きな感激のないまま門から少し歩くと、視界は一気に広がり、周防灘に浮かぶ姫島が正面に見える。
ここからは国東半島の全てが見渡せる様な気にさせる。
遠景の感激をしずめて近景に目をやると、壮大な景色の中に石が点々と置かれているのが見える。
国東半島の山々を見通し、姫島を遙か彼方の青い海に浮かべる壮大な景色のなかの、そのまた猪群山の頂上に並べられた石はしばらくはその大きさを私に認識させなかった。
巨石群が並べられている猪群山の頂きは直径70mくらいに丸く平らな平面となっている。
|
久しぶりに、気持ちのいい運動をした。
バカの高上がりとはすこぶる気持ちの良い事だと感じながら、国東半島の嶺嶺を眼下に見下ろし、周防灘に浮かぶ姫島を眺める。くたくたのはずの足腰も、絶景とマイナスイオンの空気に洗われてすっかりリフレッシュされて行く。
何のために、ここに巨石を並べたかなんて、全く不思議に思わ無い。ただただ絶景の中に見事に配置された巨石が、さらに絶景を強調する。
なんと贅沢な空間だろう。こんな絶景をより多くの人に見せたいし、私一人のものにもしたい。
贅沢な時間をいただいて現実の世界へ下ろう。 |
|
|