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並石ダムの湖尻から県道29号線を左に外れ、伊美方面への標識に従って500mほど進むと並石の集落がある。ここへ通じる500mほどの道沿いには、地区の名が示すとおり、巨石を並べた様に奇岩の壁が連なる。
奇岩のつくる谷間を並石ダムへ注ぐ都甲川の源流が小さな水の流れを見せる。 |
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県道29号を外れて、奇岩の壁を左手に見上げながらゆっくりと車を進める。ひときわ大きな岩を見上げるために車を止め、カメラのシャッターをきる。
写り具合を小さな液晶画面で確認するが、目に映るスケール感が切り取れない。 |
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大きな奇岩の壁に添って、小さく左にカーブをとる。視界に並石の集落が見えた。そこには、昔懐かしい日本の田舎がそのまま残っているような風景がある。斜面に高い石垣を築き、小さな平地をつくり、畑や水田や屋敷とし、道路は屋敷をつなぎ、田畑を巡り、迷路のように這う。 |
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それぞれの屋敷には大きな柿木が真っ赤な柿を実らせている。
たくましく天に広げた枝一面に、まるでクリスマスツリーの飾り付けの様に、丸い実が太陽の光に透かされてきらきらとかがやいている。以前は、この柿の実が冬の食料として干し柿にされただろう。 |
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都甲川に架けられた大日小橋の手前に大内岩屋の道案内を見つけ、その方向へ上る。ほどなく道路は行き止まりとなる。そこには、地区の家々と駐車可能な場所が示され、訪問者を迎えてくれる並石集落の人々の暖かい気持ちが伝わって来る。もちろん、大内岩屋までの道程も絵地図で示されている。 |
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土屋さん作/車のボンネットに書かれた地域の案内地図 |
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道案内に従って川沿いの狭い道を進むと、無数の石像郡が目に飛び込んで来る。一抱えほどの石に、個性豊かな顔が彫られている。比較的大きい石には二つの顔が仲良く頬を寄せ合って、小さな石には一つの顔が刻まれている。
大内の石像郡とあるが、寺に見られる五百羅漢に通じるものだろうか?
それぞれの顔は個性豊かで親しみやすく、にこやかな表情をしている。 |
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そこから、田んぼの段差を一つ上ると、川中地蔵の標識が脇を流れる水路ほどの川を指す。その方向をのぞき込むと、川の土手を形作る石版に地蔵が浮き彫りにされている。
あぜ道をさらに進むと、狭い谷間の傾斜に造られた水田が規則正しく積み上がる。そこには芸術作品にも見える世界が広がる。
その景色に気持ちを高ぶらせながら岩屋に祀られた大内観音へ続くおよそ150段ほどの石段を登る。
熊野の鬼が一夜で造った石段とはまるで異なり、きれいに形成された石を規則正しく積み上げられている。その石段を息を切らせながら登り切り、大きな岩に掘られた岩屋と間近に対面する。信仰心の強さと人の力の偉大さを感じて、自然と岩屋観音へ手を合わせた。 |
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乱れた呼吸を整えながら振り返ると、そこには、小さな人間が大自然に刻んだ造形世界広がり、私を圧倒する。暖色の西日を反射し、石垣に区切られた緑の棚田がつくる繰り返しの形が美しい。 |
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谷には豊かな実りがあり、豊かな自然がある。
それ以外の豊かさを拒み続けて今日の景色を見せてくれる。 |
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きれいに耕された棚田は、とても機械が入る道はない。昔ながらに、馬か牛によって耕されたのだろう。
ここには国東半島の厳しい自然を神と仰ぎ、その自然と付き合いながら生活する様がある。 |
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この高台に腰を落として、大きく西に傾いた太陽の光を反射する手水鉢越しに、大自然の雄大さと、ながい時間をかけて刻み込んだ素晴らしい彫刻に見とれて、しばし俗世界の欲望を忘れる。 |
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