一、田神主による産土神(氏神)への豊饒祈願
神官が祝詞を奏上してから弓を取り、的や神庭に矢を射る。この後、区長がサカキを献上して的に矢を射る。次に、田神主(服装は狩衣に烏帽子で、手に御幣を持つ)が神田の田植えを産土神(氏神)に奉上し、諸々の神への祈念、厄払い、五穀豊饒を祈願する。 |
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その間諸役は、大きなキセルにタバコを詰めていっぷくが始まる。大げさな仕草でキセルを皆で回し飲み、観客席の来賓にもいっぷくを進める。
ござで作った煙草入れがなかなか・・・ |
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田神主の神前での神謡
「神山の、神山の、神の御社伏し拝み、早乙女の袖をつらね、笠のはをならべつつ、水も豊かに水口を祭納る神の御田植」田神主は神謡を奉謡した後、的に矢を射る。
続いて、作庄屋(御田植の宰領役=紋付、羽織袴、帯刀)、鍬取り、駄使い、柄振押し、種蒔き投苗、立歌人(たちうど)の順におもしろおかしく矢を射っていく。
二、弓射儀礼
弓射儀礼が終わると田作りが始ま
る。鍬取り一名、畦塗り一名(長袖の白衣に白袴赤襷がけで頭に冠、白の向こう鉢巻き、わらじを履き、赤、白粉、墨で化粧をしている)が神田の畦塗り、その他の整地をするために神前へ進み出て次の言葉を述べる。 |
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三、畦塗り
鍬取りの言葉
「かように候者は、当所の者にて候。今日最上吉日を以て、神の御田を植うずるにて候。それがし鍬取りの役なれば、御田をさし急ぎ候。」と唱えて、おもしろい身ぶりで神田を一周し、神前に戻る、続けて、「急げば程なく神田に着き(鍬の柄の上に片手で頬をつけ、こっけいな所作で神田を眺めて)ほほう、平々としてよき御神田かな。おとぼ一しや、みやぼうしや、鋤、馬駄の稽古もよく上りたるものじゃよな。それがし鍬取りの役なれば、水加減をならそうずるにて候。」鍬取りがこっけいな所作を交えて畦塗り、整地を終わると牛が登場してくる。 |
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四、代掻き
馬鍬駄(もうがた)(牛使い役=服装は鍬取りと同じ)一名が、黒牛(張り子で中に二名)を追って神田を代掻き、整地をする。
牛が暴れまわり、なかなか代が掻けない。馬鍬駄は困り果てるが、いろいろとこっけいな所作を含め、やっとのことで代が掻ける。 |
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牛に引かせる道具を“モーガ”と言っていましたが、本当は何と言うのでしょう。我が家にもありました。もちろん牛に引かせて、鋤で掘り返した荒くれの土を細かく砕くための道具です。 |
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五、柄振り
続いて、柄振押しが二名で地ならしをする。地ならしが終わると早乙女等に呼びかける。
柄振押しの言葉
「いかに早乙女、早苗を配り、神主殿のおいでを待とうずるにて候。」 |
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柄振りとは・・
田んぼの泥を平らにする作業を言う。板に長い柄を付けた野道具で、田植えがやり易いように田んぼ全体を均す。結構な重労働です。 |
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六、種蒔き
続いて種蒔き一名が籾俵を重そうに担いで登場する。重くて思うように担げず、転倒してしまう。
鍬取り、柄振り押しの手助けもあり、笑わせるような所作多く交え、ようやく祭壇に供えてあった籾種を下ろし神田に蒔いていく。
時折、見物人の頭上高く籾種をばらまく。 |
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七、苗運び
続いて、投約一名が稲苗を運ぶ。稲苗のカゴが重いのか、足元がふらつき、見物人の中に倒れ込む。
仲間が手助けに来て、代わりにカゴを担ぐがまたも転倒するなどのこっけいな所作を繰り返す。
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相当なオーバーアクションで大いに観客を楽しませた。天秤かごの中身はセキショウ(国東半島ではメツッパリなんていいますね。) |
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八、御田植え
投苗が終了すると、奉仕者全員が神田に勢揃いして田植えが始まる。
立歌人一名(音頭取りの役=羽織、袴で太鼓を持つ)の太鼓に合わせて田植え歌が歌われると、早乙女五名(十歳前後の男子の女装。紅、白粉をつけ、赤襷、花笠を着用)が田植えの所作を行う。
この時の田植え歌は、立歌人と諸役の掛け合いの形式で構成されている。
立歌人の言葉
「そもそも神主殿には、よき方に向かい、御幣をさしあげ、声をあげ。」 |
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田植歌(○立歌人、△諸役) |
○ |
植えい、植えい、早乙女、笠買うて着しょうよ。 |
△ |
笠さえた〜もるなら、田をば、なんぼも、植ようよ。 |
○ |
おー、いかに早乙女、化粧紅がほうしゅいか。 |
△ |
化粧紅た〜もるなら、田をば、なんぼも、植ようよ。 |
○ |
化粧紅とんりたと〜で、なにしょうに、みいめあり。 |
△ |
面にくの、男の子の、いうたる事に、腹立つ。 |
○ |
おー、いかに早乙女、苗代の素水みいで、水や鏡をみたかよ。 |
△ |
苗代の素水みいで、水や鏡は見習え。 |
○ |
苗代の素水みいで、水や鏡を見たりとも、顔は汚れた。 |
△ |
顔は汚れたりとも、思う殿御は持ちたよ。 |
○ |
お一、いかに早乙女、富岡山に白玉椿の花の咲いたをみたかよ。 |
△ |
げに美と見たれど、黄金の花も咲いたぞよ。 |
○ |
おう、目出度し、目出度し、目出度い御代に千町や万町の御田植、うれいしや、うれいしや、朋輩衆。 |
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