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 2003年10月26日


なんて事のない日曜日をごろごろと過ごした。
8時過ぎに起床して、パジャマのまま朝食をいただいて、ゴロゴロとしながら昼時になって、昼食もパジャマのままいただいた。今、時計は2時ちょっと前。このまま一日を終わらせたくないと思い、冷たい水で顔を洗って、そこらでも散歩しようと身支度をした。身支度の途中で、松川池の近くにアケビが実る事を思い出した。そこを覗いて見ることにしようと早速カメラを肩にぶら下げて歩き始める。

日頃見慣れた風景がただただ視界を通り過ぎて行くのだが、ハッと気づいた。あまり気にしても無かった事だが、耕作をやめた田んぼや畑をセイタカアワダチソウが埋め尽くして、黄色い花を満開にしている。スーと伸びた茎の先端に粟の様な黄色い花を満開にして、お花畑を見せている。幸いにも花粉症に縁のない私には、ただただ美しいお花畑である。そんな風景に、少しだけ疑問を感じた。そういえば、子供の頃には見なかった風景である。一体、いつ頃からこんな秋色の風景になったのだろうか。

道路がどんどん整備されて、便利になるに連れ、黄色い秋の景色になったように思えた。便利を示すバロメーターの花かもしれない。そんな事を考えながら歩いていたら、松川池沿いの道に降りる所まで来ていた。


少し坂を下ると、松川池と道路の間の細くうねる田んぼで、長野さんが稲刈りあとを耕しているのが見えた。

そこを過ぎると今日の目的地。期待を持って頭上を見上げると、すっかり口を開けて枯れたアケビがむなしくぶら下がっていた。がっかりしたが、その向こうに、薄赤紫に膨らんだ、赤ん坊の握り拳程のムベが数個見えた。少し進んで、真下から見上げる。
櫨の木の枝に絡みついた蔓に、ムベが鈴なりになっている。早速こいつをいただこうと思うが、高くて到底手など届かない。竹の棒でも無かろうかと、あたりを探すが、見つからない。藪にあった女竹をへし折って差し伸ばしてみたが、それでも届かない。
がっかりしていたら、竹藪に中に太い青だけが倒されているのが目にとまった。こいつを引っ張り出して、ムベ目がけて差し伸ばしてみる。とどいた。見事にとどいた。されど、重い青竹は差し伸ばすのがやっとで、ムベをたたき落とすだけの降り回しがきかない。踏ん張って、力の限り振り回してみたがバラバラとムカゴの実が顔を目がけて落ちてくるだけだった。
もう一回、力任せに青竹を振り回す。今度はうまくいってドスンと草むらへムベが落ちてきた。限界の力をもう一回振り絞って青竹を振り回す。やけくそ気味に振り回して力尽きた。なんと、草むらを探すと2個もの収穫を得ていた。

その中の一つを割って頬張ってみた。甘くどろっとした果肉が懐かしく口の中を刺激した。そいつを舌の上で転がして、すっかり種だけをにしてふきだした。
真っ黒に光る種が足下に転がって、まるでスイカの種を飛ばした様だった。
残りの一つは、大事に胸のポケットへしまった。

松川池の脇を通る道は椚や楢の木々に覆われて、緑のトンネルのようになっている。木漏れ日がゆらゆら揺れて、心地よい風がながれて、絶好の散歩道である。勿論車など一台も通りっこ無い。のんびりとその風情を楽しみながら歩く。ふと真っ赤な反射が目に飛び込んだ。きらきらと赤い光が輝いている。


それは冬イチゴの実だった。まるでルビーが太陽の光を撥ね返す如く、真っ赤に光り輝いている。木漏れ日が通り過ぎるたびに赤く発光してもえあがっているように見えた。そいつを一つ摘んで口に放り込んで舌の上で潰してみたら、何とも酸っぱい刺激が気持ちよかった。

秋の優しい日差しが、山芋の黄色い葉を透かしている。細い蔓にムカゴがひとつ。


秋ですね。気持ち良い散歩のきせつです。