目次へ sub3-34 2003年7月27日

今年は蕎麦を蒔いて、粉にして、蕎麦をうつつもりだった。うつにはうったが、お世辞にも良い出来とは言えなかった。いろいろ研究もしたが、ただただソバらしく出来てもうまい領域に持ち込むにはそれを食す環境も大事だ。
今日は、国東の割烹「米屋」がはじめたソバ処「米屋」ののれんをくぐってみた。
先ずは、駐車場が狭い。神社の前に無理矢理駐車して雰囲気のある引き戸を開けて中に入る。

客がうまそうにソバをすすっているが、店の者の姿は無い。そのうち出てくるだろうと突っ立ていたら、先客がその様子をみて、外の呼び鈴を押せば出てきますよと笑った。
家内が慌てて外に出て呼び鈴を押すと、元気のいい店員さん(若女将と思うが・・)が現れて、昼の定番コースのみであることを説明していただき、それをお願いした。

座敷のテーブルに付くや否やソバ茶が出されて、2分ほど急須の中で煎じる時間が告げられた。店内をキョロキョロ眺め回しながら、ソバ茶の香りが気になる。
2分たったかどうかは分からないが、気持ち2分で湯飲みにはえていただく。
煎りソバの香ばしい香りが口いっぱいに広がって実にうまい。

そんなソバ茶を楽しんでいたら、ざるそばが運ばれてきた。早速こいつ をすすり込む。良い口当たりとのどごしに感激しながら、瞬く間にざるはからになった。
ソバの細さ、ネギの切り方ときちっとした仕事。どれをとっても”いい仕事”を感じた。

その次には冷やしおろしソバがたっぷりの鰹出汁に浸かって出される。程良い冷やし加減に、こいつもアッという間に腹に消えた。

贅沢を言わしてもらえるならば、もう少し味を薄くした方がソバ風味が生きると思う。とは言え、素人の戯言。こいつが一番うまい味なのだろう。

感激さめやらないうちに、今度はそばがきが運ばれてきた。一般的なそばがきとは、熱湯でそば粉を練ったものだが、ここのはそれを炙ってある。薄い焦げ目の付いたそばがきが熱いそば湯に浸されて出される。上品な生醤油をつけていただく。こいつは今までのどのものよりもソバの香りが強い。

ざるそばのつゆにそば湯を注いで、こいつをすすりながらそばがきを味わう。
最高の贅沢だった。さて、冷静に分析しよう。意地悪ではないが、実にソバを美味しく、気持ちよく客に味わってもらう工夫がある。先ずはワサビ・・小さな鮫皮のおろし板とワサビ。本物思考の強い現代人の心を確実にくすぐる。

それから、薬味のネギ。細く繊細に切られており、くどい芯は抜いてある。十分に水にさらしてネギの刺々しい刺激を取り去る心配り。

お客の注文を否定して、店の設定コースのみとは、横暴ではあるが、店の意気込みを客に感じさせる。
なかなか料理も心理も研究しつくした気合いを感じた。

誰もが、何か一つ以上の満足を感じて、また来てみようと思う「米屋」だろう。

こんな国東半島を多くの人に味わってもらいたいと思う。