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 2003年4月5日

遠く中国の大陸から飛来する黄砂に、少しだけ鮮やかさを奪われて、山桜が上品な桜色を見せる。
ここ、国東半島の山々を山桜が春色に染めて、平地に咲き誇る菜の花の黄色と春色を競いあっている。
ほとんど純白の花びらを優しく守るように新しい葉が芽吹いて、お互いの色が美しい山桜の桜色を見せている。国東半島の山々は桜色。

今日は出勤。
休日返上でPCと向き合う。・・では無く、向き合う若者を激励する出社となった。

先週の土曜日以降雨が続いていた国東半島だったが、今日はすっかり透き通る青空と太陽が、満開の桜を鮮やかに見せてくれるだろう。
そう思うと居ても立ってもいられず、出社前の桜見物に飛び出した。目的は山桜。・・雨ですっかり浄化された山肌にやわらかな桜色を見せてくれる。春霞が散乱させた光の中に遠目で見る山桜は淡い憧れ。
少し見ごろを過ぎた気もしたが、豊後高田あたりの以前見覚えた風景を期待して車を走らせる。

途中満開の花を誇るソメイヨシノを尻目に一目散に豊後高田を目指す。安岐ダムの5000本といわれる桜は見ごろを迎えて、朝のやわらかい光の中で鮮やかな桜色を放っている。
やや心を奪われるが、それを振り切って車のアクセルを踏みつづけた。

7時27分目的地へ到着。やはり、少し遅かった。それでも、山肌に点々と桜色を見せるその風景は原田泰治の絵を越える美を感じさせてくれた。
この美しさは朝の光の一瞬で消えてしまう。朝の光特有の波長しか山桜の本当の桜色を見せてくれない。その時間は遅くとも8時までだろうと思う。そんな景色を堪能して会社へと向かう。
ここまでの途中、美しく感じて、帰りにカメラに収めようと思ったソメイヨシノがやけにケバケバしく見えて、車を止める事無く会社へ着いてしまった。

山桜の魅力にときめいた私の心は、ソメイヨシノの強い桜色に妖艶に感じて近づく気にはなれなかった。
上品で清楚な山桜の魅力にしばらくは縛られていそうな気がする。