目次へ 両子山/両子寺 sub3-20   2002年9月13日

9月14日10時30分、無明橋から両子寺を通って両子山をめざし出発した。
今日は家内同伴なので無理なくと思い、かなりゆっくりと歩き始めた。
本当なら県道から始まる参道を歩きたいが、駐車場が遠くのために今日は無明
橋とした。
無明橋の少し上の駐車場に車を止めて戻る。上まで車を乗り上げると両子寺の
一番良いところを見過ごすことになる。
無明橋の手前に立って、少しさびた擬宝珠の朱越しに凛々しく睨む仁王と対面する。
張りつめた空気を少しばかりヒグラシがゆらし、モノトーンの世界を擬宝珠の朱が強烈な色を飾る。
きつい太鼓の無明橋を渡るには煩悩を捨て去る事を仁王が鋭い眼光で求める。
私たちは無明橋の意味を話ながらきつい太鼓を越えて仁王の足下に進んだ。
足下から見上げる仁王はものすごい迫力で無明橋の向こうを睨み据えてる。足は力強く大地を踏み、筋肉は隆々として脈動さえ伝わってきそうな雰囲気を感じた。
手でその筋肉を撫でると、体温が伝わって来るような感じを受けた。
 
仁王の間に立って上を見上げると総合門が見える。
自然石を大雑把に削って積み上げられた石段はその一つ一つが個性的で非連続の美を楽しませてくれる。
多くの人々が踏み続けて程良く削られた石は私たちの足を優しく受け止めて、じつにしっくりとなじむ。
きれいに整形された石段に比べて人に優しいと感じた。
両子山から滲み出す水がこの石段をしっとりと湿らせ、程良い風情の色をつくり出している。

寺までの途中には総合門がある。以前は茅葺きの重々しい作りだったが今は銅の屋根に載せ替えられている。

総合門の前に立ってその向こうに目をやると、重々しい黒い縁取りの中に鮮やかな深紅の固まりが浮かんで見えた。それは私の目の焦点から外れてひときわ印象的な赤い固まりとして宙に浮かんでいるように見えた。それが曼珠沙華であることを認識するのにかなりの時間がかかったように感じた。


その曼珠沙華の赤は今まで見たどの赤よりも鮮やかだった。

総合門をくぐって曼珠沙華の咲く土手まで歩いて、少し行き過ぎて、総合門に曼珠沙華を被せて振り返る。薄暗い門の柱に鮮やかな赤の 曼珠沙華がより鮮やかに映える。

いつまでも視線を変えてその赤と総合門の落ち着いた色調の対比を 楽しんだ。

ふと頭の上を見上げるとヤマモミジの葉が明るい空の光に透かされてきれいな緑をみせている。黒、赤、緑・・どれもすばらしい自然の美しさを楽しませてくれる。

これから秋が深まるとヤマモミジの紅葉が楽しめる。

総合門をくぐると緩やかな上りの石畳となる。そこをゆっくりと100mほど歩けば両子寺の護摩堂下に通じる。
護摩堂下から見上げる垂れモミジの緑がそそり立つ石垣に映えてエメラルドの様な輝きをみせてくれる。

足洩山両子寺。石段を登って拝観料を200円払って境内へ上がる。境内には護摩堂が落ち着いた風格を放っていた。

今日は両子山の頂上へ家内を案内する。山もみじの美しい境内をゆっくりと歩きながらその自然の色を楽しむ。

しばらく歩くと、先週登ったコンクリートの登山道脇に「七不思議、百体観音」の案内板が目に入る。

少し寄り道をと思い、脇道の案内に足を向けた。

結構きつい登りを杉の落ち枝で家内を引きながら登る。
少しの間に汗が顔を流れてくる。ゆっくりとゆっくりとこの上にある七不思議に期待してよじ登る。

約15分ほどで七不思議の「針の耳」と呼ばれる岩の小さな穴と「鬼の背割り」と呼ばれる岩の割れ目にたどり着いた。事前学習無しだからその他は認識できなかった。
ここを過ぎると後戻りが億劫に思えて、このまま山頂を目指そうと思い始めた。

家内の事も気になったが、たかだか721mの山だからと軽い気持ちでそのまま進むことにした。
先週登ったコンクリートの急斜面よりは遙かに足に優しい感触が足下に感じた。

柔らかい土とその上を被う落ち葉は芝生の上を歩く感じがした。はじめはその感触と鬱そうとしげる雑木の森を楽しみながら進んだ。
しばらくすると、傾斜はどんどん増し、登山路 を示す目的と登りの補助に設られた黄色と黒の ロープに掴まってやっと登る程になる。

その上、 日照り続きのために山の地表は乾燥して砂状と なり、その上に落ち葉がのって足のグリップを 奪う。

 必死にロープに掴まって体を引き上げてゆく。
行けども行けども周囲の様子は変わらない。家内を気遣いながら上へと躙り登る。
やや平らな部分に出たのは11時少し過ぎた頃だった。ここで少し休んだ。
1本のペットボトルのお茶を分け合い残りの道を進む。もうすぐと思いながら、
頭を被う枝の隙間にさらに高い山の頂上が見えた。
そのことを家内には告げずに、もう少しとだと激励した。
家内の状態が気になるが、一年少し続けてきた運動が効果をあらわしている様で、ねを上げずについてくる。
ゆっくりと焦らずに登り続ける。そこからさらに1時間、正午のサイレンを聞くと同時に山頂のアンテナが目の前の木々の隙間に現れた。無明橋から2時間と30分、わたしたちは両子山(721m)へ登り切った。
残念ながら、山頂は雲に被われて先週見えた姫島も高崎山も雲の中だった。
展望台では幼稚園くらいの可愛い女の子を二人連れた30代の若い父親の3人がお弁当を広げていた。
雲の隙間に僅かに見え隠れする並石ダム(なげしだむ)を双眼鏡で覗いた。
しばらく山頂のかぜで汗ばんだ体を冷やした。登山の一番気持ち良い瞬間を楽しんだ。・・・晴れていたらもっと気持ちよかっただろう。

帰りはコンクリートではられた道を下る。たぶん、山頂のア ンテナ工事の為にコンクリートで張られたのだろう。この道がかなり急で、その上落ち葉で滑る。結構気を遣いながら足を踏ん張る。疲れた足を気遣って、色々と工夫を凝らす。
急な下りの道幅を目一杯使って斜めに歩く。ちょうどスキーの急斜面下りのように右へ左へ歩くのである。
真っ直ぐ踏んばるよりは遙かに楽なことを発見した。

頂上から三分の一ほど下ったところで鹿の糞を見つけた。糞の表面はまだしっとりと湿り気があり、たった今ここに鹿が居たことを物語っている。しばらくそこに立ち止まってあたりを見渡したが、残念なことに鹿の姿を見ることは出来なかった。


      ツユクサ

       龍のひげ
帰りは余裕がある。一度通った道は何も心配することはない。道の脇に咲く花
をカメラに納めながら至る所で座り込みながらの下山となった。
奥の院下の石段下まで来たときには時計は13時を少し過ぎていた。
薄曇りの光線は柔らかく自然の色をみせてくれる。五輪塔に生す苔も、檜の樹皮の質感も、木陰に開いた曼珠沙華の赤も、これほど美しいのかと思うほどの色をみせてくれる。
デジタルカメラのフィルターが、撮像素子が、この色を正しく記録してくれることを願いながらシャッターをきった。少しだけ光に気遣って絞りを1段ほど絞めた。

気持ち良い汗を流して、美しい自然の色を楽しんで、今日の充実感を存分に味わった。

私たちが味わったすばらしさの少しでもを皆さんに伝えられたらと願いPCの前に座ってキーをたたいている。家内は次のハイキングに備えて自転車をふんでいる。・・・・国東半島の自然は素晴らしい。