目次へ 国見町 高岩登頂(高岩−一望岩ルートの起点)
sub3-97 2012年2月19日 文字は、の等巾フォント(MSゴシック)でご覧ください。

2月19日(日)曇り


2月11日に走破した「高岩」−「一望岩」尾根歩きルートの再確認と撮影を目的に、もう一度歩きたいと思っていた。昨日は大雪の上、所用があって出かけられなかった。今日は、何も用は無い。準備をして出かける事にした。
時間は10時半。高岩からの眺望と撮影には順光となる午後が望ましいので、高岩到着が正午あたりを狙って自宅を出発した。

旧竹田津トンネルを抜けて、広域農道を左折すると、100m程で伽藍から西方寺林道へ通じる脇道へ入る。ここから2km程で西方寺林道の峠直前の「高岩」登山ルート入り口へ到着する。駐車に都合の良い空き地もあるので、ここへ車を停める。

ここの数百メートル手前あたりから路面は雪に覆われていた。途中までは軽トラックの轍があったが引き返したようだ。行くべきかどうか、少し迷いながら結局来てしまった。

靴を履きかえ、リュックに国見の道の駅で買ったパンと水とカメラを詰め込んで林の中へとスタートを切る。時間は11時半。

コースはしっかり記憶できていない。とにかく尾根を目指して林の中を上に向かって歩きはじめる。間伐で切り倒した木と昨夜積もった雪が進路を阻む。倒れている丸太を跨ぎながら、尾根を目指す。ズボズボと雪に踏み込む足音を行進曲に進む。合いの手は、遠くに聞こえる犬の鴫き声と銃声。先はどの轍の跡は猟師の車のものだろう。

あっ、携帯電話を車に忘れて来た。・・・

道を誤ったか、なかなか尾根に着かない。高い方へ高い方へと進路を決めたのが間違いの様だ。コースは、もう少し左手の谷だった様だ。右に左に急な斜面を這い蹲って天辺に登り着いたが、そこは高岩のだいぶ右手の瘤の上だった。這い上がって来たコースにはイノシシやシカの足跡が縦横無尽に残されていた。

恐る恐る尾根瘤に立って眺めれば、黒く沈んだ山筋に雪がつくる白い模様が美しい。暗く立ちこめた雲が太陽の光を遮り、コントラストを強めている。

右下の岩山には香々地の行者窟らしき岩屋が大きく口を開けているのが見える。その左手の夷の谷筋も、以前訪れた古田光由の墓がある山の斜面もきれいに望める。今日は、まさにバカの高上がりあろう。

雪を踏みしめて立つ尾根から左に目を振れば、夷の道園や中山仙境が見渡せる。その向こうにはハジカミ山や尻付山などが青みがかったシルエットで連なっている。さらに左を向けば、高岩が荒々しい岩肌を夷の谷方向へ深く突き刺して聳えていた。

このまま下山とも思ったが、ゆっくりと高岩を目指す事にした。何があろうとも事故は避けなければならない。人を呼ぶ手段は何もない。ゆっくり慎重に木々に掴まりながら痩せ尾根を高岩に向かう。ここにもイノシシと鹿の足跡があった。

木々に掴まりながら進むと、時折葉の上に積んだ雪が落ちて首筋に滑り込む。冷たいが気持ちいい。


ハジカミ山 尻付山 尾群山 猪群山

さて、なんの足跡かな? 一望岩が聳えていました。

高岩下で、藪に入ると、ピンクのテープが枝に巻きつけてある。これを目印に急な斜面を登る。足下は、堆積した落ち葉の上に雪が積み、ズルズルと滑る。頼りは斜面に生える木々のみ。それも時折枯枝を掴んで滑りこける。高岩を左に90度ほど回り込んで登って行く。やがて頂上に到着した。当然、頂上も真っ白な雪が覆っていた。

高岩には、測量の基準とする標識が置かれている。ここに置かれているのは4等三角点と呼ばれ、2km毎の設置である。この岩の手前に立つと、目の前の岩との間に亀裂かある。この亀裂を渡らねば高岩の天辺に到着しない。雪で少々滑るので、慎重に木に掴まって溝の向こうへ渡った。掴まった木は枯れているので緊張した。高岩到着・・万歳!

眼前の山々は所々に真っ白な雪をいただき美しい景色を見せている。驚か鳶かさだかで無いが、気持ちよさそうに谷間を滑空している。

眼下遠くには、兄弟割れ石のある横岳の谷が、雪で白く縁どられて見える。少し左に首を振れば、驚巣も五辻の岩山も淡い空気越しに聳えている。

谷底から昼を知らせる音楽が聞こえて来た。それと同時に、犬の鳴き声と猟銃の発砲音も聞こえる。きっと、イノシシかシカ猟の犬と銃声だろう。この時期の山歩きは怖い。


さて、眼下には地球が作り出した皺シワの鋭い尾根が連なっている。カメラに望遠レンズを付けて覗くが、どれが一望岩か、どれが祠のある岩瘤かなかなか判別が付かない。おおよその見込みを付けて手当たり次第にシャッターを切る。しっかり覗こうと努力するが、寒さで手が震え、その上空気の透明度が今一すぐれないため、詳細が捉えられない。辛うじて、瘤の天辺と尾根を雪が見せてくれている。

雪を頂く一望岩に立ちしばらく絶景を眺める。寒さも忘れさせる奥深い景色に吸い込まれそうになる。

遠くに五辻の岩や鷲巣岳が青い空気の向こうにシルエットで見えている。五辻の岩山は、要塞のようにも見える。

しばらく眺めていると、右の方から突然鷲が現れた。大らかに翼を広げて絶景の中を滑空している。こんな谷間を飛べたらと思うが、私には羽根がない。

寒さに震えながらあちこちの方向をカメラに収めた。光の加減は少し早かった。もう2時間ほど過ぎた頃が良さそうだ。

雪が無ければ、このまま一望岩までの尾根ルートを歩きたいのだが、この雪では事故が気になるので諦めた。


横岳集落
元来た道を慎重に下る。下るというより滑り下る。今度は、谷筋を下る。良く見ればピンク色のテープが点々とぶら下がっている。難なく車を停めた地点に辿り着いた。

正しい登頂コースは、車を止めた所から左の進上の山の端を道沿いに進み、ピンク色のテープを目印に上れば良かった。

無事に下山し、靴を履きかえて車に乗った。雪の下りを慎重に車を転がして帰路に着く。リュックに入れたパンとお茶は持ち帰る事となった。

家に帰り、撮影した画像を拡大してみれば、一望岩や痩せ尾根からの取付や、ムラノ岩もしっかり見えていた。
ほんの少し、霞んだ空気を画像処理で透明にしたらさらにはっきりと認識できた。

GPSデーターで祠のある瘤は高岩越えのルートのすぐ先と思っていたが、画像からは、だいぶ先で、祠の瘤とムラノ岩(瘤)と一望岩は極めて近い位置にある様だ。ここは再確認が必要。

このコースをもう一度歩きたい。また、高岩越えと呼ばれる、夷の谷から西方寺の谷へ通じる昔の道を歩いてみたい。この道を歩けば、尾根瘤の上に祀られた祠の位置も祠の意味も分かるかも知れない。