ここまで来るのにあちこち回り道したが、仁
王さんは健脚の神。私の足を鍛えてくれよう
としたに違いない。それならば、仁王さんの
背中に続く奧の堂まで上ってみようと歩き始
める。山道は、整備されてはいるが、ズルズ
ルと滑る。道の両脇には、セキショウが群生
している。
日頃の運動不足かしばらく上ると膝が笑って
くる。膝間接を駆動する筋肉が限界を超えた
ようだ。両手で膝を押さえて地べたを睨み付
けながら一歩一歩上る。汗が噴き出して顎か
ら足下へしたたり落ちる。
これが今の自分の体力。頭の上の目標も、そ
こへ続く一番の近道も見えているがこれ以上
は急げない。「仕事もこれに同じだろうな」
なんて勝手な理屈を発見して自分を慰める。
気がつけば目の前に奧の堂があった。私には
とてつもなく長い時間だったように感じたが
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腕時計は15分しか進んでいなかった。
天をさす様にそそり立つ奇岩の下に奧の堂は
あった。ここまで来れた事に感謝して手を合
わせ帰路の無事をお願いした。
御堂には木造の仏様が祀られていた。岩山の
オーバーハングした部分に潜り込むように建
てられている御堂は、国東半島でも見かける
岩屋といわれる作りである。
秋の収穫に感謝して、新しい年の五穀豊穣を
願ってお祭りをしたのだろうか、境内は綺麗
に掃除されていた。
しばらく、ここからの眺めを楽しんで、来た
山道を下る。上り以上に膝が大笑いして私の
体をうまく支えてくられない。一歩一歩慎重
に滑る道を下る。途中2度程足を滑らせたが
怪我もなく鳥居と仁王さんの場所まで下り終
えた。 |
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