sub8ti82
たち鶴 |
気位で飛ぶ鶴 その声をきいたものはない 木下順二の「夕鶴」も たち鶴の一種 「夕鶴」の「夕」は「夕方」の「夕」ではなく「心意気」の「夕」 翔く姿のきれいさは 空にあでだが 羽音の流れは耐えがたくきつい たち鶴は「断ち鶴」 つぎ つぎと みずからを断って飛ぶ 羽を抜いて恩にむくいたとするのは創作で 撃ちおとした狩人に羽をなげだしたのがたち鶴 一反二反と 銭にかえさせ 傷に傷をふかめても まだ 鶴をのぞいてやめない男 順二は鶴を女にみたてたが 撃たれる鶴にめすはない なかぬ「たち鶴」のとぶのは 屋根の上だがつばさと 姿のわりに どこか 羽音に気のおもさを残すのは やはりふびんである |