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たち鶴



気位で飛ぶ鶴

その声をきいたものはない

木下順二の「夕鶴」も たち鶴の一種

「夕鶴」の「夕」は「夕方」の「夕」ではなく「心意気」の「夕」

翔く姿のきれいさは 空にあでだが 羽音の流れは耐えがたくきつい


たち鶴は「断ち鶴」

つぎ

つぎと

みずからを断って飛ぶ

羽を抜いて恩にむくいたとするのは創作で

撃ちおとした狩人に羽をなげだしたのがたち鶴

一反二反と

銭にかえさせ

傷に傷をふかめても

まだ

鶴をのぞいてやめない男

順二は鶴を女にみたてたが

撃たれる鶴にめすはない


なかぬ「たち鶴」のとぶのは 屋根の上だがつばさと 姿のわりに

どこか

羽音に気のおもさを残すのは やはりふびんである