sub8ti65



           かにたたき



干潟にすむえびの仲間である

潮が上がってくると 待ちうけていてかにを打ちにかかる

くろい砂の上に

おや爪をひろげるかにと

うすくのびた水をたよりに

打ちかかるえびの死闘はみものだが

そこをねらう うなぎの襲撃は壮観だ

どこからともなく泳ぎでて

くろい縞になって干潟をのぼる

かにたたきは とびはねて

うなぎにやられるものは少いが

三者三様の

防禦と

攻撃は

みじかい水溜りの時間を占領する

やがて干潟は

穏やかな水泡のひろがりにかわるのだが

風もない入江に浮いたひとすじの水脈にはかにたたきに折られたしおまねき

のつめが流れていく

その頃になると

うなぎも

えびも

つめのないかにもみることはできなくて 死闘の舞台はふかい水の底の砂地

にかわり ふぐが ときおり 小さい胸びれをうごかして泳ぐだけになる