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         だましえび



だましえびがだますのは

五月のはじめだけである


柿の葉が出はじめると

海から少しはなれた農家の人たちが

あみをもって

えびをとりにでかける

漁師がとらないのは

かさがあがらないのと値がしないためで

だましえびをとるのは漁師の恥とされている


とり方は いたって簡単で

満ち潮にのって浮いてくるのを網ですくいとればいい

ちょうどごみが流れ寄るように

えびが

死に体で入江にはいってくる

網でさわっても

はねたりしないし

泳ぐこともない

びくにはいるまでじっとだましつづけている


ただ

ま水につけると

いっせいに底へもぐる

べつに だましているとはおもえないが

ひとは だましていると思いこみ

そこへつけいって

とらえる