sub8ti50



        まつかさがに




海辺の

松原にいる

直接波にあたるきりたったがけの上の松が まつかさがにの

集結場になる

ふだんはがけの下の洞窟のなかに

こうもりのように

はいつくばっている

波をよけるには

そうして

天井にいることが安全なのだ

やがて海水が洞窟を浸すようになれば

天井からおちても奇険はない

まつばがにがあぶないのは

なみで

岩壁に打ちつけられるしばらくの間だけである

松かさがにが松にのぼるのは

洞窟の中でいきられなくなるとき

すごいしけのときだ

がけを

ふなむしのように群れて上ってくる

やがて

ありのように 松の幹をのぼりはじめる


舟を港に入れ

もあい綱でくくりあわせた漁師たちは

かえりに

このかにをみて家にはいる

それから

昔は

板戸を打ちつけにかかった

あのかにが松にいると思うことが

おそれをやわらげてくれたのだ