sub8ti49



        白ひわ




とうとう見あたらなくなった

山鳩とすずめの中間ほどの鳥で

卵を育てるのがじょうずだが

水に浮いた月をめがけてとび込む習性がある


夕ぐれ

麦田のうえを列をなしてとび

山間の池で夜をあかす

すんだ

かぼそいこえが

ごいさぎの

しめつけたなきごえと対しよう的で

ひどく

家路を急がせる鳥だった


白ひわ なくな

うね溝が かくれる という唄のように

農耕と

余情の深い鳥だった


池の岸辺に

羽をだくように死んだ白ひわは

翌朝

犬にくわえられて里へはこばれる


里人は

ひわのなきがらをみて

昨夜

月があまりに明るかったのをおもいしらされる


それにしても

ひわは

水面に何をみて

いのちをおとすほどのはやさでとび落ちるのか

うらみ深さを思わせた