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        掌のりどんこ




七島いの苗を川につけ

川原にわらをしいて

うえこみまえの分割をする

ちょうど

ほたるのでる頃で

学校がえりの兄姉がまだのあいだ

小さいこどもは

浅い川原で

みずあそびをする


仕事いそがしさで

かまけておれない親にかわって

幼児のあいてをするのが

この魚であった


きんぎょのえのはいったバケツをあしもとにおいて

掌のりどんこをつかまえる

掌のりどんこは

おとなの掌からはにげるが

幼児の掌だとのってくる

ゆびのあいだ

掌のうえを

すんだうすい水のなかで

胸びれをゆすりながらつついてまわる

すくいあげても

そのままでも

あくことなくくりかえす

子どもの指が

淡水魚独得のにおいのするのをまえかけでぬぐって

おやつをもたせる頃

元気のいい兄ちゃんたちが

「とったか」

と 大きな声をだしてかえってくる