sub8ti45



          ねだぬき




もう 見られないのではない

このまえ

山越しの途中

すすきの株のまえに

茶のねだぬきが

まるで

うでぐみをしたひとのように

こっくりをやっているのにあってびっくりした


このたぬきは

こそこそ声をだすとか

足音をしのばせるのをきらい

ふつうに近づけば

目をさますことはない

このこつさえわかっていれば

どんなにでも

仲良くできる

サッサッと歩いていって

ほんとに

ドッカと傍にこしをおろし

あたまをなでてやると

ちょっと猫ににたのどのならし方で 上体をゆだねてくる

山の斜面の

日溜りの

茶けたすすきの株はカラカラに乾いて なまぬくい風がゆれている

ひとをだますとか

穴をほってわるさをするとか

物語をささえるたぬき仲間の秀逸な手先が つめたく冷えている

肩さきをかかえて

しばし目をとじる気分は童話さながら


ねだぬきはまだ 山中にのこっている