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        かねたたき




川べりの柳の木などにいる

くつわ虫ににて

かねをたたくような音をだす
硬質の

金属性

「つば打ち」という名もある


その昔

この音をきき違えて 相手を切ったという武士の話もある


「かねたたき」は もやのかかった夕日をみると 垂直に

上空へとびたっていく

二枚羽の蝶のかたちが ピアノ線で吊ったように消えてい

くのは神秘でエキゾチックに思えてくる


暮れるということが

昇天に結びつくのは この虫の特性だ


はじくように音をたて

はりついたかたちで小さくなる

かねたたきは

どうして あんなきつい音をたてるのか

かねたたきの羽は闇を吸うだけで 光はかえさない

くらい虫である