sub8ti28



        夕立ちもぐら




あかげのもぐら

雷鳴をきくと出てくる

屋敷近くにはいない

畑の畦から山すそにかけて 幼虫やみみずが餌

畦のはしから顔を出し

いなびかりをみているが

ポト ポトッ

雨をあいずに

いっきに草の間を駆けだしていく

この

弾のような疾走のあいだに

夕立ちもぐらは

餌場をみつけてもぐりこむ

とんびもいなければ

いたち てんにあうこともない

おもいきりかけまわるのは

おりをぬけでた

禽獣のよろこびの表現かと思われるほどだ

少々の小溝ははねてとびこすが 着地のときは なぜ

か進行方向に尻がむいている

夕立もぐらは すかさず はねあがってむきをかえる

バネ仕掛けのおもちゃより よっぼど器用だ

うすく水のたまった小怪のうえでは

しぶきをあげて走る

ねずみが草むらをさがして低地をたどるのとは対照的だ

あしに自信があるのである