sub8ti26



         城えび 




どこからともなく泳いできたえびが

パッ パッ

と砂をかきたてると

岩の下

藻のなかからはい出たのが

バッ バッと砂をかきあげ

みるみる

大きめの藻をあしばにえびの巣をつくりあげる


波のうねりに

触覚がながく揺れ

脚が構築され

工事現場のはしげたにたえびの砦ができる

これからあとは

攻撃と防禦の生きものの争がしばらくくりかえされ

砂に近い方から順にくいちぎられていく

つよいひらいた尾をもった魚が

むこうむきに去るころ

城えびの

城のてっぺんにいた大きいえびが

バッ バッと

砂をかきたて

ビュゥーと海面すれすれに浮上して泳ぎ去る

砦のえびは

それを合図にちらばって

海はまたもとにもどる

たたかいのたびに

城えびは砦で

尾びれをもつ魚の横暴と 自分らの数の多さと 傷つく

生き方をまのあたりにみて荒だつ海のうねりは

やはり

生きものによってもぞうふくされているのだ