sub8ti12



           かげしか




かげしかは風だと言われる

言われるように

湖のある

なだらかな草原で

それも闇のなかにかぎっている


「たしかにそばを駆けぬけた わたしはみた」

という証言はあるが

足跡がない

「どちらにいったか」

ときくと すべて

「うしろ側から来て湖の方へいった 闇を利用して水を飲みにきたのだ」

とこたえる


かげしかは人よりやや背がたかく

ドッと押すようないきおいで駆け抜け ひとまたぎですごくとびこすという

「おすか めすか」

という問いには あやふやでいろいろ


だだ

湖の辺には鹿の足跡もあれば糞もある

たしかに鹿は水を飲んでいる


夏から秋にかけて

鹿でなくても駆けてみたいし うしろから鹿ににたものに追いこされるよう

な気持ちはある