sub8ti06



             浜登り



浜登りは砂色をした小さなかに

渚に穴をほって住んでいる

潮がくると たちまち穴はふさがれて かには地中深くへ埋められる


浜登りは

潮のないときは鳥を避け 潮がきたら潮をさけ 穴のふちにつめをかけた生

き方をする


機をみるに敏

身を処するに速


漢文からぬけ出たか 標語を地でいくかにである


浜登りをつかまえるには 穴にかわいた砂を入れ 乾いた砂をめやすに堀っ

ていく

まるい筒状の砂をたどって 大人のうでの長さほどいくと たいがい砂がし

めってしまう


「まちがったかな」

ふっとそんな気になって ちょっと手をやすめると 穴のそこがむくむくと

うごいて浜登りはいつさんに穴を出 近くの穴にまたはいる


とらえても 何の用もないかにだから ひまつぶしの相手にしかされない

それでも 浜登りは穴のふちに爪をかけて 脱入いずれでもと身構えている