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             引鉄えび



なみがこしらえた砂のひだが 海の底にひろがって 歩いていく足あとが

紋様をつぎつぎ断っていく


引鉄えびは 長方形に 砂の波状を消したなかにいる


どこか

ちょっとさわると すごい勢いでとびはねるが またごしたくらいでは動か

ない


せいぜいひとつまみほどのえびにしては 尾ぴれが異常に張っている


えものをくわえると 垂直になって立ち泳ぎをし 相撲のつっぱりの格好で

押していく

あし先が発達し 掴むこともうまく 放す力もつよい


岩についた引鉄えびは ターンする水泳選手さながらのうごきをする


入江で

このえびがはねあがるのは はまちの群に追われるとき 波がしぶきで白

くなるほどだ

夏のみぞれかと見まごうほどの水面の乱れに漁師の網がたてられる


えびは皆網をこすがはまちはすっぽりからめられる