sub8ti02



             穴蛙



土の穴より石垣をこのむ

崖下の水溜りの田んぼにみかける蛙だが ちょっと見は石亀がのぞいている

のかと思ったりする


みどりいろのくろずんだ かたい鼻柱 鼻の穴がはっきりみえ かにをおそ

れない

がま蛙ににらまれて すくんだべんけいがにを 夏の庭隅でみかけるが あ

れより ずっとたちがわるい


石垣にはいろうと 毛ずねをのばして近よるかにに かたい鼻先でちょっと

さわる たじろいだかにが 再び接近すると まず爪先にさわる それでも

はいろうと接近すると「ピツ」と小便をしてとびかかり かにの目に舌をま

きつけてひきたおす


目を舌でとらえるか はさみで蛙をはさみつけるか


ピ ピッ ガタ ガッ バタン ピシャ ピシッ 水がはね 土くれが崩れ

かにのあしが二、三本ちらかる それでもはさんでいると かには こうら

だけになって 穴蛙は おやづめをつけたまま穴の入口にもどってくる


がまのような にらむ相手の方が かにには安全だ