橋の上
 


橋の上

丸い尻が川を流れる

来て見ろ

白かぶのあいだで泡をあげて

水面に

十二単衣がゆらいでいる


従三位や

正二位らが見たがって


ご殿でうなった女郎の尻に

黒い肉蠅が一匹

あそこをつついている


傘をさしかけてやれ

日やけしたんじゃ値打ちがさがる

死んでるだろうが

親の気にもなってみることだ

洪水のたんびに

ここいらは女郎ながれのある土地だ

それくらいの手まわしはあるだろう


やけに

ほそめだな

あれだけの衣裳でつつむには気がひけたろう


橋の下へ

ひろいに行った奴があるぞ

とめないと

素手でさわっちゃいかん

みんな文化財だ

指紋のところから汚れたらだいなしだ


ことしも

この分だと

随分な尻におめにかかるぜ

千年たつと

なにせ尻でも

国宝だからな