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ブッダ/7月7日



手塚治虫氏からのメッセージが何か、すこし分かりにくい作品だった様に思う。

欲望がテーマのようで、満たされない世界と満たされた世界を対比させながら物

語りは進む。

満たされない世界の表現は、貧困の中に渦巻く、欲望を満たす行為の汚さを見せ

つける。

全てが、愚かな人間の欲望が引き起こす世界を悪としての物語だが、私的には、

人間の欲望が全て悪では無いと思う。そのエネルギーを何処に向けるか?ではな

かろうか。

この映画の様な方向もあるだろう。されど、人間の欲望によって、今の世界が出

来上がった。医療や科学技術の発展等々、地球上の人間全てが、より幸せに暮ら

せる世界を目指すエネルギーにもなっている。一部、そうではない欲望を満たす

だけのものもあるが・・・

ブッタの悟りは、全てが満たされた己の環境を捨てて、祈りの世界へ旅立った。

彼とて、衣食住の最低限の条件を満たされなくては、心臓さえ止まってしまう。

欲望全てを捨ててしまうには、死(無)の世界しかない。己の形を残すなら、即

身仏、微かな欲望の痕跡さえ否定するなら、それも不要だろう。死すれば、欲望

も滅するが、幸せも無い。

この世の苦しみを、仏教の世界では、生老病死(しよう ろう びょう し)と

云い、避けることのできない、人間の4つの苦悩としている。生まれること、老

いること、病気をすること、死ぬこと。四苦。と表現されていたが、別の見方を

すれば、生は無限の可能性の始まりであり、老いは人生の充実である。また、死

は全ての苦難からの開放である。唯一、病は苦であろう。

まあ、屁理屈な解釈はさて置き、ストーリーの矛盾を神がかりの魔法で消し去る

手法は、少々疑問を感じた。ただしい、神仏の解釈や人間に求める正しい心、人

を思いやる心を素直に表現してほしかった。

そうは書いたが、なかなかの作品だったとも思う。多くの子供たちが観ていたが

何を感じただろうか。