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フメノ/12月25日



単身赴任生活最後の床屋へ行った。

アパートの直ぐ近くで見つけたフメノと書かれた床屋さんである。

70歳ちょい過ぎのご夫婦がやっている。あまり流行ってはいない

と見えるが、待つことの無なさそうなこの床屋を選んだ。

フメノ?妙な名前の店だが、カタカナのどこかが消えたのだろうと

思い、主人に尋ねたら、富米野と書くそうで、フメノが正しいのだ

そうだ。出雲あたりの出と聞いた。少々薄い頭の毛を耳上3cm程

からかき上げて薄い天辺にバーコードの如く貼り付けている。

椅子に腰掛けて、鏡越しにその頭を眺めながら、「この薄い頭らし

い爽やかな格好にしたい」と、クールに伝えた。オヤジは、ニコリ

ともせずに「はい」と静かに返事して、いきなりバリカンで大胆に

刈り上げ始めた。・・・ははは・・・どうなろうと、この薄い頭じ

ゃ大したことはないだろうと、狸寝入りを決め込んだ。できあがっ

た頃目を開けてのお楽しみとした。・・・10分だろうか、15分

だろうか、天辺のハサミも終えて、ブラシで頭を払い始めた。終わ

りかな?と薄目を開けて鏡を見れば、おっ・・オヤジやるな!よく

ぞこの薄い頭をここまで・・・これが、このオヤジとの付き合いの

始まりだった。

さて、この次からどうするか?