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床屋/11月16日



床屋のオヤジといえば、たいがいが話し好きで、客を退屈させない。

ところが、それが良いときとうるさいときがある。

まあ、客との会話でネタを仕入れて、それをネタに客との会話でまた

新たなネタを仕入れて・・・

実に器用に、客を話に乗せて行くのだが・・・


たまには話に乗りたくないときだって有るのだが、そんなの関係ない

って感じで話しかけてくる。あまりにうっとうしいときは狸寝入りを

決め込む事にしている。

ところが、今日の床屋は違っていた。好みを聞いた後はただ淡々とバ

リカンとはさみと櫛を振りかざして私の薄い頭と戦っている。

こっちも、はじめっから狸寝入りを決め込む体制だったが、全く話な

どするそぶりも見せない床屋のオヤジに多少気が抜けた。

頭を刈り終えてひげ剃りにかかる時にぽつりと「寒くなりましたね」

「ええ」・・・・・