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ゆっくりゆっくり/12月23日



300坪ほどの畑に柿木が植えられていたのだが、10年くらいほったらかし

にしていたものだから篠竹が入り込んで占領されてしまった。

そいつを何とかしようと、11月なかばから竹のせいばいを始めた。

取りかかりは、長年染みついたサラリーマン気質でセコセコと気負い込んでア

ッという間に息を切らしてダウンした。

畑のすみの石に腰掛けて脳に酸素を送りながらふと思い出した。

子どもの頃、祖父のあとを追って山仕事へよくついていった。祖父の山仕事は

のんびりとしたもので、決して慌てることなく少し進めては立ち止まり、天を

仰ぎ、また進めては天を仰いで、それを繰り返すうちに山仕事が進んでいく。

まるでナメクジの動きの様にしか見えないのだが、気がつけば大きな仕事のあ

とを残していた。当然、その当時思ったことではなく、当時の事を思い浮かべ

ながら祖父の仕事ぶりを思い出した。

しばらく石の上で尻を冷やしながら乱れた息を整えた。

さて、焦ってみても息をきらすだけ、ならば祖父流の仕事を真似てみることに

しようと、のんびりとした気分に切り替えて篠竹を切り始めた。

20本ほどを切ると、今度はその竹を集めて薮から引き出す。それをひと区切

りに石に腰掛けて大きく息をして、また20本ほど篠竹を切って、その竹を集

めて引っ張り出す。この作業をゆっくりと焦らずに繰り返す。

この作業を始めてからもうすぐ2ヶ月となる。

今日で、畑の篠竹はほぼせいばいした。

百姓の仕事にきりはない。それだから、祖父の仕事ぶりなんだと今思えた。

サラリーマン生活では、気づかなかった事を畑の篠竹切りで気づいた様な気

がして、イイ気分で篠竹切りを楽しんだ。