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台風/2004年8月30日



16号が九州から本州ををおそった。

子供の頃は当たり前だった台風の通過だった。滅多に見る機会の無い

であろう台風の目も真上に眺めた経験もある。

茅葺きの屋根だった我が家の屋根が台風に引き剥がされて降る雨が畳

に落ちて来た記憶もある。ドリフのコントではないが、アルミの洗面

器を並べて滴の音を聞きながら暗闇で台風の通過をじっと待った事も

あった。

台風の本当の恐ろしさを理解できない年齢の私にとっては何となくワ

クワクとした冒険の様な台風だった。

台風は大きな魔物との戦いのである。祖父や父や母の慌ただしい動き

に大人の逞しさを感じて、私の心が興奮していたのだろうと思う。荒

れ狂う風雨の中に飛び出して家の屋根をロープで縛ったり、風に引き

剥がされそうになる雨戸を釘で打ち付けたり、田んぼの畦を見回った

り・・命がけの行動を目の当たりにした。

今は家も頑丈になり、相当の台風にも耐える様になった。私たち大人

が切羽詰まった状況で毅然と動き回って家や家族を守る姿を見せるチ

ャンスが無くなった。

あって欲しくはないが、親の勇ましい姿をみせるチャンスは少なくな

ったと思う。

台風が大人の逞しさや勇ましさを見せてくれた時代もあった。・・

台風16号のニュースを遠く離れた東京のホテルで見ながらふとそう

思った。