sub1877

千木秤/2004年3月29日




国東半島は周りを海に囲まれた半島。

我が家は海岸から5kmほど山に入り込んだ場所にある。

そんな山里に海辺の漁村から天秤かごに魚を担いで売りに来ていた。

その中の一人は特徴的なおじいさんで、未だに記憶に残っている。

やせ形の小さなおじいさんは天秤かごが地に着く程低く担いで、愛想を

振りまきながらほとんど毎日決まった時間に現れていた。

そのおじさんは千木秤で魚の重さをはかって金額を出す。

その様子がおもしろい。

千木秤の分銅がピーッと跳ね上がるように手ではじく。

どう見ても魚が重いぞ・・と言わんばかりなのだが、どの魚が百グラム

何円なんて書いてもいなければ口で言うわけでも無い。それなのに、必

ず千木秤ではかってから金額を決めていたように記憶する。

いったいあれは何だったのだろうか?

遠い昔のことだから今更おじいさんに聞くわけにも行かないが、今思え

ば不思議な光景であった。

それを誰も何も言わなかった大人達はおおらかでのんびりした時間を過

ごしていただろう。そんな時代がふと羨ましく思えた。