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草の香り/2002年7月14日 |
6時30分起床。 25ccの2ストエンジンが力強くまわり、伸びた草を引き ちぎる。その瞬間に草の爽やかな香りがたちこめる。爽や かで、全く甘さのないそれは、私しか楽しめない世界の香 り。 雨に水分をもらった草は太陽のエネルギーを吸収してどん どん伸び続けて、すっかり土手を覆い尽くし、その形をも 変えてしまった。 程良く伸びた草はらに直径30cmほどの回転カマを遠慮な く振り込む。かまは容赦なく草を地面から引きちぎり、あ たりに振りまく。 その瞬間、草は爽やかな香りをあたりに放出する。 太陽と水と地球が合成したにおいのもとを大気へ放ってい く。この香りを楽しみながら伸びた草に覆われた土手の形 をなぞる。 回転するカマの先には小さな紫ツユクサやねじ花や鳩麦の 花が揺れている。 刈り取る植物の種類によって、香りはどんどん変化してゆ く。愉快な香り、高貴な香り、楽しい香り、落ち着く香り。 どの香りも爽快な本質は変わらないが、そのバリエーショ ンは草の数だけあるようだ。もちろん、フキやシロ草やセ リのように強烈で個性的な香り、ヨモギや茅の様な柔らか い香り、ツユクサや笹のようにほのかな香りを放つものま で、実に多くの植物の香りを楽しめる。それらが程良くブ レンドされて私のまわりの空気に蒸散し、どうだ、と言わ んばかりに私を誘惑する。 草は刈られることによって根を強く張り、さらにたくまし くなる。草の香りはそのためのフェロモン。 |