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日本の文化/2001年12月19日



日本には良い文化があった。

私が小さい時分、祖父は私を膝に乗せて、「嘘をついてはい

けない。」「嘘をつくと、閻魔さんに舌を抜かれる。」「火

遊びをしてはいけない。」「火遊びをすると、あの世に行っ

たら火炙りの刑にされる。」等々、やってはいけない事を、

地獄という異次元の架空世界の恐ろしい様を伝えながら戒め

た。そのための道具として、地獄絵、閻魔さんの姿、その閻

魔さんが舌をやっとこで引っ張っている絵がそこら中で目に

することが出来た。

それから、私が大人になり、息子が生まれて育てる時代にな

ると、情報化社会に突入し、科学で裏打ちされた事しか信じ

ない時代へと変化していった。こうなると、閻魔さんも、地

獄も、罪を戒める道具が失せてしまい、小さな嘘や、社会に

対しての迷惑な行為を戒める手段が失われてしまった。

もちろん、明らかな犯罪は司法によって裁かれ、実刑となる。

ところが、これは地獄の閻魔さんほど怖くない。情報の氾濫

で、罰金か執行猶予か、悪くても禁固1年、その禁固も暖か

い飯と寝る場所と、適当な運動と、読書やテレビも許される

世界だと言うことをみんな知っている。

人間が理屈だけですべての行動を制御するのは難しい。仏教

は地獄と極楽浄土、キリスト教は地獄と天国を以てって悪い

行動を戒め、良い行動を勧めて来た。今の世の中は、倫理も

常識も、人に迷惑をかけない最低限のマナーもへったくりも

無い。子供の頃の地獄の様と、罪の恐ろしさが青少年の非行

を防止してきたと思う。今更地獄絵も有るまいが、青少年、

少女たちに、やってはいけない事を、罪の重さを判りや易く

教える手段や、人のためになる行動がどれほど世の中を豊か

にするかを教える方法が必要と思う。・・

真の文化が生み出せないだろうか。