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財産/2001年7月24日



私は農家の長男である。

代々、祖先は百姓を続けてきたが、私の代で百姓を止めた。

祖父や父や母が、朝早くから夜遅くまで汗みどろで働き続

ける姿を見てきた。それだけ働いても家族がやっと生活で

きる限界の収入しか無く、私が学校に行くのも相当の負担

だったと感じた。

こんな農業の苦しさを嫌って、中学の頃から農業以外の職

業を選ぼうと思った。そして、今サラリーマンである。

30歳までは花の東京で働いたが、私の働く会社が我がふ

るさとへ工場をつくる話を聞いて、早速志願し、ふるさと

へと戻った。ふるさとへ戻り、それから約2年で父が他界

し、その財産を私が引き継ぐことになった。もちろん、百

姓など出来ない私は、その土地を小作に出した。それから

20年、小作を引き受けてくれる方も年を取り、それらの

土地は私に戻された。百姓などする気もない私だったが、

財産を受け継ぐ段階では何か大変な価値があるものを受け

継いだように思えた。それが、いざ自分で管理する段にな

ると大変なものを受け継いだことに気付いた。米を植える

こともなく、土地が生み出す付加価値は無い。その上、こ

の土地を買ってくれる人もいないとなると、・・管理の負

荷だけが私にのしかかる。荒れ放題にすれば隣の田んぼに

迷惑をかける。それと同時に、祖父や父が守ってきた田ん

ぼを、私をこれまでに育ててもらった田んぼを、荒らして

しまう事に対する罪悪感もある。

財産もいろいろある。・・こう考えよう。日曜たんびに私

の体を鍛える草刈りをいただいたと。