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味わい/6月20日



私が国東半島に戻った1981年はウニやカキやアサリ

やぜんご等の海の幸が豊富にあった。それから19年が

たった今、ぜんごを除いて殆どが姿を消してしまった。

自然環境の変化か、それとも乱獲か。良くはわからない

が、海岸へ降りる楽しみが激減してしまった。たとえば、

権現崎海岸。・・キャンプ場から海岸への階段を降りる

と石浜が有り、その石にびっしりと小さなカキが着いて

いた。金槌や釘抜きとバケツを持ってカキ取りに出かけ

た。まずは自分の腹を満足させ、それから土産をバケツ

に詰める。小さなカキだからなかなか腹一杯にするには

大変だが、新鮮なカキを自然の塩味でいただく贅沢はこ

の上ない満足感を味わえた。少し潮の満ちかけた海岸で、

更にバケツを満杯にして我が家へ戻る。持ち帰ったカキ

を七輪の炭火がまた違った味付けで楽しませてくれる。

軍手を両手にはめ、熱いカキの殻を持ちながら、汁をこ

ぼさないように口へ運ぶ。家族みんなが七輪を囲み、新

鮮な焼きガキを楽しむ。私は下戸だが、いける口であれ

ば冷たく冷やしたビールが最高にうまく感じるだろうと

想像する。こんな贅沢な味わいを毎年のごとく繰り返し

てきた。ふと気が付くと、いつの間にか懐かしい出来事

となっている。いつからカキの楽しみが出来なくなった

のか?。ハッキリした記憶が無い。徐々にカキが採れな

くなったのであろう。もしかしたらと先日訪れて見たが、

海岸に転がる石ころにはカキの殻のみが少しだけ残って

いた。生態系が徐々に変化する。すべてが自然破壊のせ

いではないと信じたい。よりよい住処を求めて移動しと

いう解釈もある。

人間だってよりよい住処を求めて移り住んで行く。その

先が利便性を求めた都会であったり、自然環境を求めた

田舎であったり。欲望の行き着く先はそう簡単に答を一

つに出来ない。カキもどこかへ引っ越したのであろう。

きっと引っ越し先を見つけ出して、またあの感激を味わ

いたいと願う。国東の海は楽しい。