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国東町岩戸寺修正鬼会   2003年2月7日 


 
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満天の星のエネルギーがすべてここに注がれて、大
松明に燃盛る炎となった。
燃え上がる炎は、激しく火の粉を放って暗黒の天を
再び満天の星空とした。
冷たい空気が燃えさかる炎に照らされて少しずつ天
空へとのぼり始めて修正鬼会がはじまった。

修正鬼会とは

国東半島の天台宗の寺院に伝わり、その趣旨は仏教
行事のみならず、正月行事や農耕儀礼がひとつにな
った祭典と考えられる。
国東六郷満山の修正会のおり、成仏寺が旧正月5日
岩戸寺が旧正月7日の両寺が隔年交互に行事を執行
している。神仏混淆の文化をうかがい知る貴重な行
事である。天台宗寺院の各寺伝によれば、各寺、各
地域事に毎年この行事を続けていたが、諸処の事情
により、現在は豊後高田市の天念寺と国東町の岩戸
寺、同成仏寺のみとなっている。天台宗の寺院には
修正鬼会に関する資料や面等が今も残されている。
両子寺や胎蔵寺でも多くの資料や面や道具を見るこ
とが出来る。
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岩戸寺修正鬼会解説より抜粋

鬼会の行事のうち最後の法華三昧大行法は、読経と立役動作か
らなり、特に鬼面の芸能は、招福除災の効験ありとされる。呪
師芸の一つとして、中世の芸能資料的価値はきわめて高い。鬼
会は、火と水の禊払いに始まり、院主とタイレシの結縁の作法
タイアゲ、罪障悔過の聲明が行われる。立役では、呪師作法で
ある鈴鬼の「鈴鬼九手秘伝」や災払鬼、荒鬼、鎮鬼の「三三九
度の法」が修される。その後、各家々を廻り加持祈祷をする。
国東修正鬼会の鬼は仏の化身であり、一切の行事が終わるのは
明け方となる。
当伝承は、昭和52年に重要無形民俗文化財に指定されている。 
・・・
 
昨年成仏寺の修正鬼会を見物して、国東の仏教文
化の神秘的な部分を垣間見た。
また見たいと思っていたが、今年は平日で会社の
勤務がある。諦めていたが、会社の仕事を終えて
から出かけることにした。18時過ぎに会社を出
発。燃料が少ないことに気づいて行きつけのスタ
ンドに寄る。そして、国東町の岩戸寺を目指す。
途中コンビニでパンと飲み物を夕食・夜食と思い
仕入れた。そいつを頬張りながら日の落ちた国道
213号線を走る。ほとんど通りの無い国道を波
の音を聞きながら来浦まで走り、来浦川沿いに上
る。
・・ 会社を出てから約30km、時計は7時少し過ぎて
いた。県道に車を止めて、懐中電灯と軍手と帽子と
デジカメをポケットに突っ込んで岩戸寺への道を上
る。途中地域の人々に出会い挨拶を交わす。ほとん
どが高齢のおばあさんやおじいさんたちである。
杖をついたり、誰かに引っ張ってもらったり、楽し
い会話を交わしながら寺へと急ぐ。私も遅れまいと
必死でそのあとに続く。寺の入り口にある仁王に挨
拶をする時分には薄い頭に汗が滲んでいた。帽子を
脱いで見上げた空には満点の星がまるでプラネタリ
ウムの様にキラキラと輝いていた。
 
・・・
そこから寺の方を見るとすで
に大勢の人が集まっている様
子がうかがえた。
地域
の人たちに続いて私も寺の講
堂へと進んだ。大勢の人々の
向こうに去年見た仏事の様子
が少しだけ見える。大勢のに
わかカメラマンがそれを取り
巻いて私たちの視界を遮って
いる。彼らの足の下から首を
突っ込んで見ると、僧侶の前
にひれ伏している鬼と書かれ
た白法被に身を包んだテイレ
シの尻が並んでいた。
 
まわりを見渡すと、カメラマ
ン以外はほとんど地元の人々
のようで、その顔はきびしい
この地域で自然を相手に生き
抜いてきたおばあさんやおじ
いさん達だった。
年々観光行事化して行く伝統
行事もここ岩戸地区は今も地
域の行事で有り、無病息災、
五穀豊穣、国家安泰の重要な
地域行事だと感じた。
この行事の遂行には多くの人
々の協力と尽力と多額の実行
資金が必要と聞く。
来年もこの行事が続いてくれ
る事を願う。
そして、今日で会ったおばさ
んやおじいさんに次の岩戸寺
の修正鬼会に出会えることを
願う。
仁王の足下に腰掛けて楽しく
交わす話は今日の修正鬼会に
参加したお父さんか息子の勇
姿かもしれない。

その話に耳を傾ける仁王の頭
上には満天の星がきらめいて
いた。
・・・