musashi-c1 吉弘楽 2012 2012年7月22日


近くに住みながら、吉弘楽を観る事が無かった。今年の初めにそう思い、今年こそはと思い今日を迎えた。

7時45分、我が家を出発し、8時過ぎに楽庭社に到着した。
駐車場も数台で、見物客もまばら。境内を歩き回っていると国東市文化財調査委員会会長の高木さんにお逢いした。多くの文化財を有する国東半島をもり立てる方策は無いものかとの話になる。

やがて、祭りの主催者の皆さんが集まり始めて、社殿に向かい拝殿から今日の楽奉納を報告し、直来へと進み、10時過ぎに保存会会長の挨拶、来賓挨拶、来賓紹介で楽の奉納が始まった。

吉弘楽(よしひろがく)について            国東市商工観光課パンフレット転記
 吉弘楽は、毎年七月第四日曜日に国東市武蔵町吉広宇美婦(みふ)に鎮座する楽庭八幡神社境内の楽庭に於て五穀成就、虫祈祷の為に行われる修法である。

 昭和四十一年三月二十二日に大分県の無形民俗文化財に指定、昭和四十六年四月二十一日に文化庁より無形民俗文化財に選択、平成八年十二月二十日に国の重要無形民俗文化財に指定された。

 養老二年(七一九)、仁聞菩薩(にんもんぼさつ)が国東半島の六郷二十八山に天台宗と宇佐信仰の習合した霊場六郷山を開いた頃六郷山寺院の住職の指導と参加により、盛んに楽打ちが行われていた。

 吉広村においても、六郷山中山末寺天満坊の本尊薬師如来に対して、薬師法により天下泰平、国家安穏、五穀成就、虫祈祷のため楽打ちが行われていた。

 南北朝の頃、豊後国主大友氏の分家吉弘氏の始祖吉弘正賢公が当地に入封し、府内杵原八幡宮の分霊を勧請して守護神とし、吉弘楽を保護司祭して益々隆盛を極めて以来、二百年間歴代城主の司祭で続けてきた。吉弘氏八代氏直公が居城を都甲荘屋山(ややま)に移すや、吉弘楽も亦都甲松行で楽打ちが行われる様になった。慶長五年石垣原の合戦にて、十一代城主吉弘統幸の戦死により、吉広村における楽打ちは次第に衰退するに至った。元禄十年杵築藩主松平日向守重栄侯の命により庄屋高原徳左衛門らは、吉弘氏ゆかりの地都甲松行(豊後高田市)に続いていた吉弘楽を同地の藤兵衛らを招いて伝授を受け、百年ぶりに復活して今日に及んでいる。

 楽打ちは、本頭(ほんがしら)、中頭(なかど)、末頭(すえ)の三組に大きく編成され、各組は、音頭(おんど)、鉦(かね)、笛、念仏申、端楽の役に分かれて総勢四十九人で行われ、立烏帽子、兜、陣笠、鳥兜、侍烏帽子を冠り、手甲、脚絆を装い、白足袋に草軽を穿き、腰蓑を着け、旗差物を背に差し、「テーンガ ターガ ターヤー、ガーターガ ターヤー ツークウーテーン」と声迦(しょうが)を口の中で唱え、胸に着けた太鼓を打ちながら三音頭と六人の鉦打ちを囲み、円陣をつくり、勇壮に楽打ちをする。

 楽には、「ツグリ」(演目のこと)が十四演目あり、その内容は、・・・


吉弘楽演目(よしひろがくツグリ)
 1. 神納(しんのう) 心身を浄め東方にお在する薬師如来に楽打ちをお告げする。
 2. 山形(ガタガタ) 曼陀羅の修法壇に模して結界(輪)を造る道行(みちゆき)である。
 3. ツクテンツク 輪を造り意気天を突く威容を示す道行の一部である。
 4. 道楽(みちがく) 本尊薬師如来の前を右廻りして楽庭(道場)に入る。現在では東方に向き楽庭を右廻りする。これは薬師法でいう入道着座して修法壇につくことである。
 5. 四方固音頭庭入(しほうがため) 四天王と八万四千の諸仏の御来降を請じて庭の東西南北を清める。
 6. テンゴーゲー  天にお座す諸仏を楽庭にお迎えする、薬師法では迎請聖衆(ぎょうしょうしょうしゅう)と云い太鼓の左「ばら」で天を指す。
 7. 念仏(ねんぶつ) 南無阿弥陀仏の六字の名号を天台聲明風の曲節を付けて大聲で唱える。
 8. テンゴーゲー 天よりお迎えした諸仏を天に奉送申しあげる。薬師法では奉送聖衆と云う。
 9. シドロ 一番シドロ、二番シドロ、三番シドロとありて吉弘楽の神髄であり修法の中心である。
10. チーゴーゲー 地にお在す諸仏を楽庭にお迎えする。薬師法では迎請聖衆と云い足先で地を蹴り虫追いを表す。
11. テンダラマンダラ 比叡山日吉神社に祀る「山王マンダラ」、「マンダラ神曼陀羅」を信仰して名号として唱える。
12. チーゴーゲー 地より請じた諸仏を修法が終わり奉送申し上げる奉送聖衆と云う。
13. ツクマン 「○、満」のことである。修法、祈祷の総てを満たしたことである。
14. トーテン 四方固めで請じた四天王と八万四千諸仏が天にお帰りになられる(登天)。

以上で楽打ちの総てを終了する。終わったならば旗差物の先に着けた御幣は氏子、信者に配り水田に立てて虫封じをする。尚、往古楽打ちの時は、藩主は郡奉行を代参として差遺司祭せしめ神酒三升を献上するを例とした。

保存会会長挨拶

来賓の吉弘氏(末裔)

山形(ガタガタ)


吉弘楽・・武蔵町史より(PDF)