2009年4月29日 国見町 旧千燈寺 西の不動 nisinofudoui-5e
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太郎天石屋

この画像の岩壁の下に太郎天石屋があった。

なかなか発見させてくれなかった太郎天石屋発見の日となった。空は快晴、7時18分に大不動下を通過して、いつもの杉林の中をひたすら歩いて尾根を目指す。

尾根直前のところで突然キジの雌が私の目の前で羽をばたつかせて走り回る。幼鳥にしては大きい。もしかしたら、近くに巣でもあって、私の目をそこから引き離す為だろうか?それを横目で追いながら目の前の急な斜面にしがみついて尾根へと出た。時間は7時33分だった。大不動前から15分でここまで来た。今日は、ペースが良い。

ここからは、尾根伝いに時折絶景を楽しみながら歩く。落ち葉の堆積した急斜面に足を取られながら太郎天石屋を目指して進む。

今日は、目印にしようと白いビニールテープを持参した。こいつを適当な間隔で木に巻き付けながら進む。以前に目印として巻かれた赤いテープが時折剥がれかけて木にぶら下がっている。


今日は、リュックの中に500mlのペットボトルの水と小さなお菓子が二つ入っている。たったこれだけだが、以前の何倍も安心感があって、どこまでも行ける気がする。太郎天石屋に必ず辿り着ける気がする。

途中、振り返れば北に鷲巣山が聳え、東には少し霞んだ五辻の東不動一帯が見渡せる。眼下の谷間からそびえ立つ奇岩の天辺には木々の萌える新緑が目に眩しい。・・絶景!である。

時折、尾根に腰を下ろして、リュックの水を飲みながらこの絶景を堪能する。

朝のさわやかな風と光の中で絶景を楽しむ。先ほど歩いた尾根道が眼下に見える。中央上端に五辻不動の岩山が微かに見える。

前回道を逸した場所に到着した。
『太郎天石屋』の白い矢印道標は有るのだが、地面に転がっていた。・・・はたしてどっちを指しているのか?真すぐに1時間ほど進んだが太郎天石屋は発見出来なかった。

今日は、千灯寺の住職の言葉(大不動石屋から太郎天石屋が見えている。)を信じてこの標識を左手の方向へ下りてみた。しばらく歩くと、木の幹に赤いテープが巻かれているのを見つけた。ここに間違いは無い事を確信する。時間は8時5分。
大不動岩屋下から42分、大藤石屋手前の尾根からは28分だった。
意外と近い距離に太郎天石屋はあった。


太郎天石屋からの景観はすばらしい。
鷲巣山も、大不動も、そして、遠くは五辻の岩山も眺望できる。
太郎天石屋前に立って高いむき出しの岩肌を見上げると真っ青な空と天辺の若葉の蒼が美しい。

太郎天石屋は高い岩壁の下の棚に小さく抉れた洞になっている。南に高い壁がそそり立つ為か洞の前は日当たりが悪く、草もほとんど無い。野生動物の足痕が無数に有った。
足跡は偶蹄目のもので、鹿かイノシシだろう。
尾根道にも鹿の丸い糞と固まりのイノシシの糞がみられた。
修験者の行場も、今は獣たちの生活の場と化している。
尻付の岩屋から遠くは無いが、見つけにくく険しい場所である。


太郎天石屋に祀られていた太郎天石像は、頭に兜巾(ときん:修験者のかぶる黒い小さな頭巾)を付け、背中には天空を自由に飛ぶことをあらわす翼を付け、手には一扇ぎで大風を起こすヤツデの扇を持っている。鼻は天狗の象徴である大きく高いものだが、よく見るお面の様に手で握れるほどでは無い。

石像の羽の部分には赤い彩色が残る。さて、この太郎天さんはどんな彩色がされていたのだろうか?鼻の周りが少し黒いように見えるが、顔は真っ黒に塗られていたのだろうか?

天狗は、山の神との関係も深く、霊峰とされる山には必ずいるとされ、それ故に山伏の姿をしていると考えられる。
山の神を天狗とする地方は多い。天狗の持つ神秘観が山岳信仰と結びついたもので、天狗についての伝説は山岳信仰の深さを物語るものと云われている。


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